現在位置 : ホーム > マグ研 ラインナップ > Vol.1 モータ用磁石と着磁
近年、磁石は高温化にさらされる自動車に使用されるため高保磁力化の要求からBH-エネルギー積が大きく、Dy,Tb等の添加による高保磁力希土類系磁石が開発されています。
一方、携帯機器等のモータは小径・小型化が進み、効率向上のため、高磁界を発生する磁石が要求されるようになってきました。
モータを滑らかに静かに回すため、コギングトルク・騒音の低減から磁石材料の改良とともに着磁波形への要求が益々厳しくなっています。この様な背景からモータに使用される磁石を着磁するための磁化力は年々増加し、着磁波形の評価も一段と厳しくなっているのが現状です。
このような状況にお応えするために、専業メーカーである当社でも研究開発を進め、技術力を高めておりますが、これら技術情報が少しでも各産業の進展に寄与できればと願い、現在の着磁技術・方法についてお伝えしてまいります。
<シリーズ文責> 日本電磁測器株式会社技術開発部・生産部 堀 充孝
磁石には、フェライト系、NdFeB系、SmCo系、AlNiCo系、SmFeN系等があり、次のような用途に使用されている。
磁石の用途
磁石は以下に示す用途に用いられているが、多種多様である。
NdFeB系焼結磁石のモータ用途
現在、最も強力であるNdFeB系焼結磁石がモータに使用される用途を以下に示す。
以下に、系統別磁石の特性をまとめる(最大エネルギー積、保磁力、残留磁束密度)。
永久磁石モータに使用される磁石形状は、小容量モータに使用されるリング磁石、IPMやリニアモータに使用されるブロック磁石、大容量モータに使用されるセグメント磁石に大別できる。
(1)リング磁石
リンク磁石は、直接ロータにはめ込み数百ワット以下の小容量・小型モータに使用され、モータが滑らかに回転するように、コギングトルク、騒音を抑えるため磁石の配向によりラジアル異方性、極異方性磁石が一般的に使用され、等方性磁石も小容量モータに使用されている。
コギングトルクの低減など回転性能を向上するために着磁するパターンを工夫し、そのパターンを得るために磁石材の開発が試みられている。
(2)ブロック磁石・セグメント磁石
ブロックやセグメント磁石は、永久磁石を回転子表面に配置したSPMモータ、回転子内部に永久磁石を埋め込んだIPMモータ、リラクタンストルクを高めた永久磁石リラクタンスモータ(PRM)等に使用される。
希土類磁石の開発から急激に最大エネルギー積が大きく、高保磁力となっている(表1参照)。
一般にAlNiCo系磁石は10[kOe]程度の低い磁界で、フェライト磁石は保磁力の3倍程度の磁界で着磁することができる。
NeFeB系焼結磁石においては30[kOe]、SmFeN系では40[kOe]の磁界が要求されるが、Dy,Tb等の添加によ
る高保磁力希土類系磁石が開発されており着磁に必要な磁化力は益々大きくなってきている。
最大エネルギー積 [MGOe] | 保磁力Hcb [kOe] | 残留磁束密度 [T] | |
---|---|---|---|
フェライト系 | 4.7(焼結)/ 2.2(ボンド) | 3.9(焼結)/ 2.7(ボンド) | ~0.45(焼結)/ ~0.31(ボンド) |
AlNiCo系 | 11 | 1.6 | ~1.3/~0.3 |
SmCo系 | 32/17 | 10.1/7.6 | ~1.2/~0.7 |
NdFeB系 | 48/11 | 13/5.7 | ~1.4/~0.8 |
<表1. 磁石特性>
■次回、Vol.2では、「コンデンサ式着磁装置」についてご説明します。